雪国だからこそしっかり考えたい高気密高断熱住宅の換気と種類

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高気密高断熱住宅は、気密性、断熱性に優れた住宅です。一度暖めた(冷やした)空気が漏れにくく、温度変化が起きにくい特徴があります。

「空気が漏れにくい」ということは、「家の中の空気が入れ替わりにくい」ということでもあります。空気が入れ替わらないと室内の空気が汚れたままになってしまったり、室内が湿気っぽく、結露が起こってカビが発生しやすくなったり、シックハウス症候群になってしまったりするなど、健康面に影響を与えます。

ここで言う、シックハウス症候群とは、住宅などで起こる倦怠感やめまい、頭痛、湿疹、のどの痛みなどの症状が現れる体調不良のことで、「住宅由来の健康被害の総称」として知られています。

そこで、この記事では、高気密高断熱住宅の換気と種類について見ていきます。この記事を読むと、「高気密高断熱住宅には、どんな換気設備を付ければいいのか」が分かります。

高気密高断熱住宅と計画換気

換気と言えば、「窓を開ける」というイメージが一般的でしょうか。料理をしているときなら「換気扇を回す」かもしれません。窓を開けたときに室内に入ってくるさわやかな空気は気持ちがいいですよね。

けれども、窓を開けると、せっかく暖めた(または、冷やした)室内の空気を屋外に逃がすことになります。雪国の冬は寒いです。“あの”寒さは、家の中では避けたいもの。冷暖房効率も悪くなってしまいますしね。

高気密高断熱住宅では換気が必要だけれど、快適さや空調の効率を考えると窓は開けたくない……この相反する問題を解決するために生まれたのが、「計画換気」という考え方です。

「計画換気」とは、24時間計画的に換気する方法で、「1時間で住宅内の半分の空気を入れ換える」ということが法律(建築基準法)で定められています。

計画換気2つの種類

計画換気には、大きく分けると2つの種類があります。

自然換気

自然換気は、機械に頼らず、自然の通風を有効活用したり、温度差によって空気の流れを作り換気を行ったりする方法で、自然な空気の流れだけで家の中の空気を換気します。

メリットとしては、機械に頼らないため、送風音がなく、省エネです。デメリットとしては、風の流れが自然に起きるように建物や間取りを設計するのが難しく、課題が多いことです。そのため、現時点ではあまり採用されていません。

※参考になりますが、現在の自然換気は床下の空気を暖めて家の中の空気に対流を起こす方法です。新潟や長野など雪国の住宅では、高床式にして床下を駐車場にすることもあるため、構造的な難しさもあります。

機械換気

現在、日本の多くの住宅で用いられている方法です。室内の空気が1時間で半分入れ換わるよう、ファンを回して計画的に空気を入れ換えます。

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メリットとしては、設置が容易なこと。設計の制限が少ないこと、自然換気に比べ設計コストがかからないこと。デメリットとしては、ファンの音が気になる場合があること(小さなファンなので、通常はあまり気になりません)、電気代がかかること(月500円~1000円ほど)などが挙げられます。

機械換気の3つの種類

ここからは、国内のほとんどで用いられている機械換気の種類について見ていきます。機械換気には、第1種、第2種、第3種の3つの方法があります。

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第1種

第1種は、「給気と排気の両方を機械で行う方法」です。給気と排気の際に、暖めた(または、冷やした)室内の空気の温度と、外気の温度を交換しながら(これを、「熱交換式換気扇」と言います)換気します。

この方法のメリットは、外気と室内の空気を熱交換しながら給排気するため、省エネ性能が高いことです。例えば、外気がマイナス10度で、室内が25度の場合、熱交換をすることで、外気を取り込んだ際に室内に近づけて取り込むことができるため、暖房も最小限でよくなり、空調の面で省エネになります。

この方法のデメリットは、設置コストが掛かることです(第2種、第3種の2~4倍ほど)。また、ファンが2台のため、第2種、第3種に比べると消費電力が掛かります。

第2種

第2種は、「給気を機械、排気を自然に任せる方法」です。給気装置で屋外の空気を強制的に屋内に取り込みます。屋外よりも室内のほうが空気の圧力が高くなり、その分、排気口から自然に空気が出ていきます。

この方法のメリットは、第1種に比べると設置コストが安くできることです。また、ファンが1台のため消費電力も下がります。

この方法のデメリットは、外気を取り入れる際に熱交換を行わないため、第1種の比べると空調の省エネ性能が下がることです。また、給気側の機械にカビなどの微生物が付着していた場合、室内に汚れた空気を取り入れてしまう恐れがあります。また、気密性能が高くない住宅では、湿気を含んだ空気が壁のすき間から漏れ、断熱材の中に入り込んで結露を引き起こし住宅の性能が損なわれる場合があります。そのため、高気密高断熱住宅にはほとんど使われていません。

第3種

第3種は、「給気を自然に任せて、排気を機械で行う方法」です。排気装置で屋外の空気を強制的に排出するため、屋外よりも室内のほうが空気の圧力は低くなり、給気口から自然に空気を取り込みます。

この方法のメリットは、第1種に比べると設置コストが安くできることです。また、ファンが1台のため消費電力も下がります。また、排気設備が空気を排出する側にあるため、第2種のデメリットである、室内の空気の汚れや結露の発生がありません。

この方法のデメリットは、外気を取り入れる際に熱交換を行わないため、第1種の比べると空調の省エネ性能が下がることです。

まとめ:どの換気設備をつけるべきか

高気密高断熱住宅の換気と種類について見てきました。

記事中にも触れたように、高気密高断熱住宅では現在のところ、機械換気が主流です。また、第2種はデメリットが多いことから、実質的には第1種か第3種ということになります。

第1種は冷暖房した空気の熱交換ができるため、空調のランニングコストを抑えられます。一方、設置コストが掛かり、ファンの消費電力も掛かります。

第3種は自然給気のため熱交換はできませんが、設置コストが安く、ファンの消費電力も安いです。

丸山工務店のこれまでの実績では、第3種を選ばれるお客様が多いです。また、設置コストとメンテナンス性、ランニングコストをトータルで考えたとき、第3種をおすすめすることが多いです。

換気は快適な生活やランニングコストに影響を与えます。寒い雪国だからこそ、しっかりと考えて決めたいものですね。

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