安全・快適に過ごす雪国の家の屋根と形状

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

雪国の家は、雪と切っても切れない関係があります。

特に屋根の雪下ろしは非常に重労働で、危険を伴う作業です。新潟県内では毎冬、屋根の雪下ろし中の転落事故や、屋根から落ちた雪の下敷きになる事故が起こっています。

また、雪には想像以上の重量があります。含む水分量によって差がありますが、1平方メートルあたり1cmの雪が積もると3kg、10cm積もると30kg、1m積もると300kgです。丸山工務店がある新潟県妙高市では、一晩に1メートルぐらいの雪が降ることがあります。家に相当の荷重が掛かることが容易に想像できるでしょう。

むやみに落とせば近隣の迷惑にもなりますし、雪の下敷きになると思わぬ事故にもつながりかねません。それだけに、屋根の雪対策は、冬の安全と快適な生活を決める上でとても重要なのです。

そこで、この記事では、積雪が多い雪国における屋根の形状と安全性、快適性について見ていきます。

雪国に多い屋根のふき方

屋根には、大きく分けると瓦でふく方法と、トタンなどの金属でふく方法の2種類があります。かつては、茅(かや)などの植物を使う方法もありましたが、現在はほとんど使われていません。

ここで言う「ふく(葺く)」とは、瓦や金属、植物などで屋根をおおうことを指します。

雪国では、トタンなどの金属でふくのが一般的です。その理由としては……

  • 瓦そのものの重量があるため、軽いトタンに比べると雪を頻繁に下ろす必要があること
  • 瓦の凹凸があると、雪下ろしの際足元が不安定なこと
  • スノーダンプで雪を下す場合、瓦の凹凸にスノーダンプが引っかかること
  • 常に雪があると雨漏りしやすいこと

などが挙げられます。

DSC_0405

スノーダンプによる屋根の雪下ろし

ちなみに、瓦は海辺などで使われることが多いです。海辺はトタンだと錆びてしまうこと、強風でめくれる危険があることなどから、重い瓦が使われるのです。

雪国における屋根の形状

雪の処理を考えると、屋根のタイプは3つに分けられます。

自然落雪タイプ

snow-country-house-roof-shape-3

屋根に勾配をつけて、雪を自然に落とすタイプです。雪止めを付けずに、滑り落とします。雪が多く降る地域では最も多い形状です。

メリット

  • 電気や灯油などのエネルギーを必要としないため、ランニングコストが掛からない
  • ある程度雪が降れば自然に落ちるため、雪の重量による負担が家に掛からない

デメリット

  • 屋根から落ちた雪を積み上げておくスペースが必要。高床式にするとよい(参考:一年中多くのメリットが!雪国で高床式住宅が選ばれる8つの理由
  • 屋根から勢いよく滑り落ちた雪が、道路や隣の敷地に落下し思わぬトラブルにならないよう十分なスペースや飛び出し防止フェンスが必要
  • 気温が上がると、屋根の雪が滑りやすくなり、急に落雪する。雪の下敷きにならないように、玄関の出入り口や落雪方向に注意。雪が落ちる前に除雪をすると危険。子供やお年寄りが近づかないよう注意喚起も

融雪タイプ

snow-country-house-roof-shape-4

電気や灯油のエネルギーを使って、屋根の雪を解かす形状です。雪を落とすスペースがない場合に採用されます。

屋根に雪のひっかかりができる金具をつけて落雪を防止し、融雪設備で雪を融かします。融雪する方法には、屋根に電気マットを敷き詰める方式や、不凍液を灯油やガスで暖め、循環させる方式などがあります。電気やガスはコストがかかるため、灯油を使うケースが一般的です。

メリット

  • 雪を落とすスペースがない場合に有効
  • 雪が直接落ちてこないため安全

デメリット

  • ランニングコストがかかる
  • 大雪が降った場合は、コストが掛かるため、人力で下すこともある

耐雪タイプ

家の構造を通常より丈夫にし、屋根の雪の積もらせたままにしておく形状です。都市部など、宅地面積が広くとれない場合に採用されます。代表的な構造としては、屋根をM型にする方法、フラットにする方法、雪止め金具で落雪を防止する方法があります。

雪が多い豪雪地帯では、あまり採用されません。

メリット

  • 雪下ろしの必要がない
  • エネルギーが必要なく、ランニングコストがかからない

デメリット

  • 家の構造を丈夫にする必要があり、イニシャルコストがかかる
  • 常に屋根の上に重量物がのっている状態になるため、地震に弱い

雪庇対策

snow-country-house-roof-shape-5

最後に、雪国の屋根にできる雪庇(せっぴ)について紹介します。雪庇とは、風が強いときに、屋根の上に降った雪が風で運ばれ、屋根の端よりも真横に伸びたものです。

一度雪庇ができると、その後には風がなくても雪が降り積もるため、さらに成長するようになります。

雪庇によって、屋根の端に負担がかかる他、これが落下すると人身事故を引き起こすことがあります。そのため、雪庇は早い段階で取り除く必要があります。特に、自然落下ではないタイプの屋根では注意が必要です。

まとめ

雪国の家と屋根の形状について見てきました。

雪国の家は、雪と切っても切れない関係があります。屋根の雪対策は、冬の安全と快適な生活を決める上でとても重要です。

できるだけ労力をかけず、コストもかからず、安全に過ごせるのが雪国におけるいい家の条件。どんな屋根の形状にするかは、土地の条件等によっても異なるので、経験豊富なハウスメーカーや工務店と相談しながら進めるのがいいでしょう。

カテゴリ:

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

小冊子「雪国で失敗しない家づくり」をプレゼント!

みなさんは、今まで家を建てたことがありますか。ほとんどの方が家を建てた経験はないのではないでしょうか。多くの人にとって家づくりは、人生に一度の大きなイベントです。

「一生に一度」ということは、「初めて」ということであり、「やり直しがきかない」ということでもあります。今まで経験したことがないだけに分からないことだらけ。しかも、やり直しがきかないとなると、不安も多いものです。

しかも、雪国はとても厳しい環境です。寒さ対策や除雪の心配もしなければなりません。雪が降らない地方よりも、考慮すべき点が数多くあります。

そこで、はじめて家を建てるみなさんの不安を解消し、「この家を建てて本当に良かった!」と思っていただけるよう、小冊子を作成しました。

この小冊子は、雪国で、初めて家を建てるみなさんの、「快適な家づくりの手引き」です。雪国の家づくりの基本から、太陽光発電や省エネ、高気密高断熱など、最新の技術にも触れています。

あたたかく、快適な暮らしができる「雪国の家づくり」のヒントになれば幸いです。